調剤過誤による責任

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本来調剤するべき薬剤を誤って別のものを患者さんに渡してしまう調剤過誤。調剤過誤を起こしてしまった結果、患者さんの健康状態に何らかの問題が出れば、そこには法的責任が発生します。しかし、調剤過誤における法的責任とは具体的にどのようなものであるかは意外に知られていないものです。そのため、調剤過誤に対して過度な不安を抱き、患者さんに対して適切な対応ができないケースも多々見られます。ここでは、そのような調剤過誤が置きた際の法的責任について解説していきます。

刑事責任

刑事責任とは、犯罪行為に該当する事態を引き起こした場合、法律で定められた刑罰を受けなくてはならないという重い責任です。調剤過誤によって患者さんの健康状態に何らかの問題が出た場合、調剤過誤を起こした薬剤師は、「業務上過失致死傷罪(刑法211条1項)」に「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする」と定められている通り、刑事責任を問われることになります。

刑事責任に問われるかどうかは、調剤過誤によって引き起こされた患者さんへの健康被害の度合いによります。健康被害が軽度なものであれば刑事責任に問われないこともありますが、重度の健康被害をもたらしていたり、薬剤師の過失が重大なものであった場合は刑事責任に問われるのです。なお、調剤過誤があった場合でも、患者さんに健康被害が見られない場合は、刑事責任に問われることはありません。

ただし、過去に起こった調剤過誤によって薬剤師が執行猶予つきの禁固刑の判決や罰金刑を受けたケースはあります。

参照元:薬局・薬剤師のための医療安全にかかる法的知識の基礎
(https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pharmacy-info/0308_2.pdf)

行政責任

調剤過誤を起こした薬剤師が罰金刑以上の刑罰を申し渡された場合、薬剤師法8条、5条に基づき免許の取り消しや業務停止といった行政処分を受ける場合があります。ただし、行政責任は必ずしも発生するとは限らず、行政処分がくだされるのは厚生労働省によって処分が必要と判断された場合のみです。過去のデータを見てみると、行政処分が行われ業務停止などの処分が下された判例は、いずれも患者さんに対して重大な健康被害を与えたケースとなっています。

民事責任

民事上で責任を負う人

刑事責任や行政責任があくまで国や行政に対する責任であるのに対し、民事責任は調剤過誤によって健康被害を受けた患者さんと薬剤師とのあいだの関係における法的責任となります。そのため、民事上で責任を負うのは調剤過誤を引き起こした薬剤師個人となるのです。

また、民事責任においては被害をもたらした本人に加え、その使用者も損害賠償責任を負うことになります。調剤過誤の場合、薬剤師本人だけでなく、その使用者、もしくは調剤契約の当事者である薬局開設者も損害賠償責任を負うことになるのです。さらに、調剤過誤を起こした薬剤師の監督者である管理薬剤師なども同じく民事上の責任を負うことになります。

民事上の責任が発生する条件とは

過失

過失と言うと、「意図せずついうっかりやってしまった」と考えがちですが、法的には過失は「客観的注意義務違反」と定義されています。つまり、過失の法的な意味は、「本来義務があったにもかかわらず、それを怠ったこと」となるのです。

さらに、「注意義務」は悪い結果を予見する義務である「結果予見義務」と悪い結果を回避する義務である「結果回避義務」に分けられます。どちらにせよ、法的に定義される過失は、不意のアクシデントではなく悪い結果を予見したり回避したりする義務の違反であるという認識が必要です。

因果関係

因果関係とは、特定の行為とそれによる結果とのあいだにある関係性のことです。調剤過誤における因果関係とは、例えば間違った薬剤を患者さんが服用してしまったこと(特定の行為)によって、患者さんに健康蟻害がもたらされてしまった(結果)という関係になります。

損害の発生

ここでいう損害とは、金銭的な損害のことです。損害はさらに、治療費などの実際に支払われた金銭である「積極損害」と、調剤過誤によってもたらされた健康被害による、もしくは今後起こると見込まれる収入減少である「消極損害」、そしていわゆる慰謝料である精神的損害に分けられます。

注意すべき点は、こうした損害が法的に認められない場合、仮に過失があったとしても民事責任は認められないという点です。

患者とのトラブル

調剤行為が原因で起こるもの

患者さんとのトラブルの主たる原因のひとつが調剤行為における誤りです。薬剤の数量の誤りや薬剤の取り違えがこれに該当します。例えば、「0.5mg」という調剤量を「5.0mg」と取り違えてしまうと、患者さんは必要以上の量の薬剤を摂取してしまうのです。

調剤行為以外が原因

患者さんとのトラブルには、調剤行為以外が原因で起こるケースもあります。例えば、薬局内で患者さんが転倒するなどの事故や個人情報の流出などがそれです。

患者側に原因があるケースもある

患者さんとのトラブルの中には、患者さんの方に原因がある場合もあります。例えば、過失はあったものの健康被害には至らなかったにも関わらず過度な要求をしてくるようなケースがそれです。

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民事紛争を解決するには?

示談

調剤過誤をはじめとする医療事故が紛争化した場合であっても、多くは示談によって解決されます。これは、裁判による解決には、多大な時間、労力、費用がかかるからです。患者側と薬剤師側の両方が歩み寄れば示談での解決が可能ですが、話し合いに決着がつかなかった場合は裁判をはじめとする法的手続きを行うことになります。

調停

示談が不成立、もしくは最初から示談の成立が困難であると判断された場合は、簡易裁判所に調停を申し立てて公平な調停委員を仲立ちとして問題の解決を図る場合もあります。

裁判

示談も調停も不成立となった場合の最終手段となるのが裁判です。また、話し合いの場がまったく持たれなかった場合でも患者側が裁判所へ訴訟を行った場合は裁判が行われます。

ADR(裁判外紛争解決手続)

裁判をはじめとする法的手続きは難しく、多大な時間や費用がかかります。そこで、裁判よりも簡易かつ迅速に問題解決を図るために利用されているのがADR:Alternative Dispute Resolution(裁判外紛争解決手続)です。医療紛争の経験が豊富な弁護士が中立な第三者となって加わることで充実した話し合いを行い、問題を迅速に解決することを目的としています。ただし、ADRでも患者側と薬剤師側が合意に至ることが目的であることは他の手段と変わりません。

参照元:薬局・薬剤師のための医療安全にかかる法的知識の基礎
(https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pharmacy-info/0308_2.pdf)

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