薬薬連携とは

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安心できる薬物療法をしっかりと患者に対して継続的な提供を行うためには、入退院や他施設受診などの場面において「薬薬連携」は必要不可欠です。ここでは「薬薬連携」について、概要や重要性などを紹介します。

薬薬連携とは

「薬薬連携」の概要

「薬薬連携」とは、薬局薬剤師と病院薬剤師が情報を共有することで、入院・退院をしたときにも充実の医療が受けられるようサポートを行うことをいいます。患者の入院時や退院時には服用薬の内容が変化しやすくなりますので、適切な投薬が行えるよう薬剤師同士の連携が必要になるのです。共有する情報の例としては入院時に服用している薬剤の種類や服用量、既往歴や副作用歴、アレルギーの状況、入院中に追加となる薬剤、アソヒアランスの情報のほか、普段から使用している一般用医薬品や健康食品などがあります。

薬薬連携の具体的な取り組み例

「薬薬連携」の具体的な取り組みの一つとしてよく見られるものにお薬手帳があります。これは医療機関ごとの処方や検査値などを時系列で記載するもので、簡易に利用できるツールとして多くの患者に利用されている状況です。ただし、お薬手帳はそれ自体のサイズ制限からすべての情報を伝えきれない場合があるため、そういった時には「施設間情報連絡所」を用いることもあります。これは患者の同意を得たうえで、次に受診する医療機関の関係者へ伝えたい内容を記載するものです。
また、他にも地域勉強会を通して薬局薬剤師と病院薬剤師が連携を行うケースや、退院時地域連携(退院時共同指導)を活用することで薬局薬剤師が病院薬剤師に直接問い合わせやすい環境づくりなどといった取り組みも見られます。また、院外処方箋を通した薬薬連携に取り組む医療機関も増えてきています。

薬薬連携の現状

薬薬連携を通して地域医療への貢献・発展を遂げていくためにはさまざまな課題があるといわれています。そのうちひとつとしてまず挙げられるのが薬局薬剤師・病院薬剤師のどちらか、または両方における人員リソース不足があります。それぞれの薬剤師は各々やるべき業務がありますので、日常業務の兼ね合いや各施設の人員事情を踏まえると、薬薬連携の重要性を理解はしているものの取り組むのが難しいという状況も散見されます。他にも個人情報の取り扱いにおける課題などもあり、患者のプライバシーを脅かすことがないよう適切に情報を管理していく必要があります。今後はICTやAIなどの技術を活用しながらの業務効率化や情報管理の強化が期待されます。

国も連携強化を後押ししている

薬薬連携は日本国全体としても後押しが進められており、入退院を繰り返しがちな高齢者が「ポリファーマシー」になることを防いだり、がん患者に質の高い外来化学療法を提供するためには薬局と病院の薬剤師が情報を共有して適切な対応をとることが不可欠だと考えられています。そのため国では近年、診療報酬と医薬品医療機器等法(薬機法)の両方の側面から連携強化を進めるべく取り組まれています。
2020年度の診療報酬改定では医療の役割分担と連携強化がテーマの一つとなり、薬局と医療機関の連携強化についての具体策が掲げられました。複数の医療機関を受診する患者への重役投薬の解消を処方元の医療機関に提案した場合に薬局が算定する「服用薬剤調整支援料2」などが新設されました。また、2020年9月からは薬機法の改正に伴い調剤後の患者へのフォローが義務付けられるなども規定されています。これらのように、国も薬薬連携への取り組みが進むよう各種法改正・制度の整備が進められています。

薬薬連携の課題とは

ここまで説明した通り、薬薬連携は非常に重要であると捉えられているがゆえにさまざまな取り組みが推し進められています。そういった実践を踏まえたからこそ今見えてくる課題にはさまざまなものがあり、それらの解消も今後必要になってくるでしょう。
たとえば入院時に持参薬を確認する際、お薬手帳の情報が最新でなかったり用法・用量・規格が不明瞭で参考にしづらいなどということもあります。さらに病院薬剤師から提供される情報が少ない場合、患者への説明で食い違いが生じる可能性もあります。これからは在宅医療が広がるといわれていますから、薬薬連携の取り組みはますます重要になると考えられます。患者の健康管理をしっかりと行えるようにすることで、症状の変化への素早い対応ができたり予期せぬ副作用を防ぐことができるようになります。現状を踏まえながら運用を変えていくことで、病院と薬局がしっかりと連携して患者の健康管理を行うことが期待されています。

病院薬剤師さんとの連携が重要に

さまざまな課題が残っている薬薬連携ですが、スムーズな連携を取るための対策もいくつか打ち出されています。たとえばすぐできる対策としては地域の医療関係者を集めて行う勉強会や研修会であり、「病院薬剤師との接点を作る」ということを目的とされています。研修会のあとに名刺交換や歓談することで、地域での人脈を広げていくことが薬薬連携を推し進める第一歩になります。薬局からの疑義照会であっても、人となりが分かっている相手から受ける相談であれば病院側も親身になって対応してくれる可能性が高いと考えられます。患者への服薬指導で迷ったり、トレーシングレポートへの返信が届かない場面などさまざまな場面で人脈がモノをいいます。そのためひとり体ひとりの繋がりが円滑な情報連携に繋がっていくのです。ここまで説明してきた通り、薬薬連携は「病院薬剤師」と「薬局薬剤師」が連携するものですので、この双方が話をしやすい、コミュニケーションを取りやすい環境を作ることが薬薬連携を推し進めていくために必要な要素であると言えるでしょう。

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