流通改善ガイドライン

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長年の課題であった医薬品の流通改善。

今、国は「流通改善ガイドライン」を掲げ、これまで当事者間での取組みとしてきた、この課題を国主導で改善しようとしています。

これまでの商慣行を変え、薬価調査が適切に行えるよう協力することが、今後の薬局経営に求められています。

流通改善ガイドラインとは

厚生労働省が2018年に作成した「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」は、通称、「流通改善ガイドライン」と呼ばれています。

このガイドラインでは、医薬品の流通改善の課題として、「未妥結・仮納入の改善」、「単品単価取引の推進」、「一次買差マイナスの解消」が挙げられています。

流通改善ガイドラインとは、これらの課題を改善することで、「薬価調査」が適切に行われる環境を整備して、医療機関または薬局への実際の「納入価格」を正確に把握し、「薬価基準」を算出することで、国民の経済的負担を軽減しようというものです。

流通改善ガイドライン導入までの流れ

医薬品の流通改善について、国はこれまで、医薬品の流通関係者間で取り組むように提言してきました。

しかし、なかなか改善が進展しないので、国が主導して、「流通改善ガイドライン」を作成し、その遵守を医薬品流通関係者に求めることで、流通改善を進展させようとしています。

流通改善ガイドライン策定の目的

医薬品の流通関係者としては、「メーカー」、「卸売業者」、「医療機関または薬局」の3者が挙げられます。

医薬品の価格は、メーカーが提示する「仕切価格」で卸売業者が買い、卸売業者と医療機関または薬局が交渉して「納入価格」が決まります。

医薬品の価値は、時代とともに変化するため、その価格も変わっていきます。

医薬品の「薬価基準(保険医療に使用できる医薬品の品目とその価格を厚生労働大臣が定めたもの)」は、実際の「納入価格」をもとに決められます。

そして、この「薬価基準」をもとに、実際の「納入価格」の交渉が行われます。

その循環を適正なものにすることを目的に、流通改善ガイドラインが策定されました。

また、薬価調査は、2年に1度行われていますが、2021年度から「薬価中間年改定」が実施されるようになり、毎年、薬価基準が見直されるようになったため、流通改善の必要性が増してきているという状況があるようです。

長期にわたる未妥結・仮納入を改善する

医薬品の卸売業者から医療機関または薬局に、医薬品を売る際には、両者が話し合って、納入価格を決めることを「妥結」といいます。

この妥結交渉が煩雑なため、まず、暫定薬価で仮納入し、後日、交渉して薬価を決めるという“業界の慣習”があります。

この仮納入から妥結までの期間、つまり未妥結の期間が長い(原則として6ヶ月を超える)と、厚生労働省が毎年行う「薬価調査」に暫定薬価が使われてしまうことがあります。

そうすると、実際に売買された価格よりも高い価格で「薬価基準」が決められてしまいます。

その結果、患者さんの医薬品への支払い負担が増えてしまうことになります。

そのため、厚生労働省は、未妥結をなくす方向で動いており、その移行期間は、未妥結率を減らすよう、「未妥結減算制度(妥結率50%以下の場合、初診料、再診料、外来診療料、調剤基本料が引き下げられる)」を設けるなどの施策を行っています。

総価契約でなく単品単価契約を推進する

これまでは、卸売業者と医療機関または薬局との医薬品の売買では、総価契約が多く行われていました。

「総価契約」とは、複数の品目を総価で交渉して、その総価に合わせて単価を設定したり(単品総価契約)、または、個々の薬価を一律値引きしたり(全品総価契約)する契約のことです。

この総価契約では、過剰な値引きが行われることが多く、医薬品の価値に見合った価格での取引ができていないという問題がありました。

そこで国は、個々の医薬品の価値を考慮した上で、適正な価格を設定するため、「単品単価契約」をするよう求めています。

それにより、卸売業者の使命である「安定供給」につながっていくと考えられます。

一次売差マイナスを改善する

「一次買差」とは、卸売業者が医療機関または薬局に売る時の「納入価格」から、メーカーが卸売業者に売る時の「仕切価格」を差し引いた「差額」のことです。

この一次買差は、卸売業者の儲けとなるため、本来ならば、プラスの数字のはずですが、これがマイナスになってしまうことがあります。

メーカーは医薬品の価値を守るため、仕切価格を高く設定してきます。

一方で、医療機関または薬局は、儲けを出すために、納入価格を低くするよう求めてきます。

この狭間で卸売業者は、やむなく赤字の取引をすることになってしまうことがあるのです。

ただでさえ医薬品の卸売業は、営業利益率が1%前後と低いため、卸売業者にとって、流通改善は悲願でもあります。

メーカーは、一次買差を補てんするため、これまで、「割戻し」や「アローアンス」を卸売業者に支払ってきました。

「割戻し」とは、取引高によって支払われたり、新商品を買ってもらうために支払われたりするお金のことで、「アローアンス」とは、販売促進のために支払うお金のことです。

国は、この「割戻し」や「アローアンス」を「仕切価格」から差し引くよう、メーカーに提言しています。

ガイドライン遵守に向けての薬局の課題

以上のような国からの提言に対し、今後、薬局が取り組んでいかなければならない課題としては、次のようなことが挙げられます。

早期妥結に努める

薬局は、卸売業者から医薬品を購入する際、早期に妥結するよう努め、少なくとも前年度より未妥結率を減らす必要があります。

総価契約ではなく単品単価契約を行う

医薬品の価値に見合った納入価格となるよう、単品単価契約を少なくとも前年度より増やす必要があります。

また、単品単価契約に関して、次のことがこれからの薬局のすべきことといえます。

  • 個々の医薬品の単価表を手元において契約をすること
  • 年間契約よりも長期契約を結ぶこと
  • 未妥結減算制度の報告対象期間(4月~9月)外も単品単価契約を結ぶこと
  • 急配や返品などにかかる流通コストも踏まえて、適正価格を提示すること

頻繁な価格交渉を行わない

頻繁な価格交渉を行うことで、時間や手間がかかり、妥結の時期が遅くなりがちになります。

また、安定供給につながる適正価格よりも低い納入価格での契約になりがちです。

そのため、頻繁な価格交渉は行わない方がよいといえます。

医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉を行わない

医薬品の価値を無視した、流通コストを考えない、過大な値引き交渉は、医薬品の安定供給を妨げます。

たとえば、全国一律のベンチマークを使っての値引き交渉は、未妥結・仮納入を助長し、安定供給を妨げるので、行わない方がよいといえます。

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