薬局経営で重要な薬剤師の人材育成

部下育成手法の一つであるコーチングですが、薬局経営においては薬剤師へのコーチングも重要なポイントです。ここではコーチングの解説と、コーチングの基本的なステップ、コーチングのコツを紹介します。

薬剤師を取り巻く環境の変化

薬剤師の業務は、服薬指導や在宅医療、かかりつけ薬局制度などにより、対人業務が増加しています。以前のように、処方せんを受け取り、調剤して患者さんに薬を渡すといった対物業務から、患者さんの服薬状況を継続的に把握し、薬や健康についての相談を受けるといった業務へシフトしたことで、地域医療を支える役割も担うことになりました。

また医療政策・制度(報酬形態・加算要件・法令など)が変化すれば、都度対応が必要です。

特に患者さんへのヒアリング力、服薬指導力といったスキルが求められるようになりました。

調剤薬局で見られる育成の課題

指導者(管理薬剤師等)の時間・スキル不足

慢性的な人材不足に悩んでいる調剤薬局も多く、特に小規模薬局では外来対応に忙しく、在宅訪問やかかりつけ薬剤師としての時間が取れないこともあります。

そのため指導者として部下へ指導する時間や、自身のスキル不足のために育成ができない状況を招いています。

育成プラン・研修制度の不足

調剤薬局の教育体制は、現場で学ぶOJT教育が中心です。体系的な育成プランや研修制度が整備されていないため、指導者によって育成にバラつきが出てしまうリスクを伴います。

また各薬剤師がどのスキルをどのレベルで保有しているか、可視化できるスキルマップもないため、個々のレベルが把握できません。

薬剤師のモチベーション・キャリアパスが不透明

調剤薬局では日々の業務がルーティン化しており、キャリアアップの道筋が見えにくい課題があります。また責任の重さに対する給与や待遇に不満を感じるケースもあり、薬剤師のモチベーションが上がらないことも課題です。

それぞれの課題を把握し、目指す道筋を示すためには指導者とのコミュニケーションが大切になるでしょう。

評価基準・目標設定が不明瞭

調剤薬局ではそれぞれの薬剤師に対する評価基準や目標設定があいまいで、不明瞭な場合があります。ここが不明瞭なために、モチベーションが上がらないことにも繋がります。

「業績評価」「能力評価」「情意評価」の3つの要素で評価を構成し、各薬剤師のキャリアプランに沿った目標を設定することが望ましいでしょう。

時間が無い!育てても辞める!そんな薬局には

せっかく育てた薬剤師が、結局辞めてしまうとお悩みの薬局は、調剤監査システムの導入や見直しを検討してみましょう。

適切なシステム導入により、薬剤師1名と薬剤師以外のスタッフで薬局を賄えることもあります。

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コーチングとは?

コーチングとは、目標達成・パフォーマンス向上のために、自発的な行動を促すコミュニケーションと定義されています。相手の話に耳を傾けながら会話を重ねることで、相手のやる気を引き出しポテンシャルを発揮できる状態へと導いていきます。

コーチングの代表的なスキル

傾聴

相手の話に耳を傾ける力を傾聴スキルと言います。「聴く」ことの大切さは近年注目されており、ビジネス書としても多く出版されています。傾聴スキルに求められる力は、単に人の話を聞くというだけではありません。相手の発言の本質を見抜く力が大切です。

まずは、相手の話を聞くことに集中すること。最後まで話を聞き、相手の話に口を挟まないことがポイントです。話を遮ってはいけませんが、適度に相槌を打ちながら相手を安心させていきます。さらに、相手の表情やしぐさなどからも情報を得ましょう。

薬局経営では、薬剤師の考えや思いを聞くことが大切です。部下が話しやすい雰囲気づくりをすることで話を引き出し、情報を共有していきましょう。

質問

薬局経営におけるコーチングの質問スキルでは、薬剤師の考えを引き出してあげましょう。質問には「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」があり、状況に応じて使い分けていく必要があります。

クローズドクエスチョンは「はいorいいえ」で応えられる簡単な質問です。質問力は問われず、明確な答えがあるものをいいます。早く質問の答えを知りたいときに用いられる方法です。

オープンクエスチョンは、明確な答えがない質問です。質問の回答は自由形式となっており、自由な答えが欲しい時に使います。情報を深く掘り下げたいときや、アイデアを引き出したいとき、思考の幅を広げたいときに有効です。

どちらの質問の場合でも、質問の目的や意図を明確にする能力も必要になります。

承認

コーチングスキルで大切なことは、相手を承認することです。承認するためには信頼が必要になります。相手の本心を引き出すには、安心感を与えなければなりません。緊張感をほぐし信頼感を醸成させなければ、「話したい」という気持ちにはなってもらえません。承認するためには、可能性を持っていることを信じ、答えを見つけるためにはコーチングが必要であることを意識する必要があります。

ひとつは「結果承認」。薬剤師であれば、目標を達成した時の承認です。もうひとつは「存在承認」。目標達成までのプロセスに対して承認することです。それぞれの承認に対して声がけをしていくだけでも、薬剤師のモチベーション向上が期待できます。

フィードバック

行動改善支援のためのフィードバックもコーチングに必要なスキルです。的確に状況を把握するためには、第三者目線で自己を知ることがとても大切です。フィードバックには、客観的事実を伝えるフィードバックと主観的事実を伝えるフィードバックがあります。どちらの視点でフィードバックするかは、相手がどちらを必要としているかを意識しなければなりません。

フィードバックは適切に行うこと、決して命令・忠告にはならないことを意識しましょう。相手に伝わっていなければ意味がないので、正しく理解しているかを確認してください。フィードバックは相手の行動変容や継続性を維持するうえでも非常に大切です。

コーチングの基本的なステップ

話しやすい環境づくり

まずは話しやすい環境づくりを行いましょう。第三者に話を聞かれやすい環境は避け、本心を打ち明けられる場所で話すことが大切です。1対1で話すことに相手がストレスを感じる場合は、心理状態に応じて第三者を介入させるという方法もあります。

テーマを決定

つづいてテーマを決めます。コーチングではコーチングを受ける相手が基本的に物事を決めます。話すテーマが複数ある時は優先順位を相手に決めさせましょう。重要度の高いテーマがある場合は上司がテーマを決めることもあります。状況に応じて柔軟に対応することが大切です。

現状を整理

問題を明確化し、現状を整理していきます。現在の状態を把握し、今後の課題や問題を考えていくステップです。現状を理解し把握すると言う事は、今後の目標設定と目標の達成への近道にもなります。効率的に問題を解決するためには欠かせないステップです。

現状の問題を理解できていない場合、コーチングを通じて相手に気づかせることができます。会話の内容があいまいで明確でない場合は、相手に気づきを与えて具体的にイメージできるように導いていきましょう。

目標設定

現状を整理し把握した後は、目標を設定していきます。問題に対して具体的なイメージができていれば、目標に向けての設定がしやすくなります。その時に大切なことは、設定した目標と現在の状況のギャップを明確にすることです。目標に到達するまでの距離を認識し、目標達成を実現するためにするべきことが理解できるようサポートしてあげましょう。目標を達成することで得られる変化など、さまざまな質問を繰り返すことで理想の未来像を具体的にイメージしやすくなります。

リソースの発掘

目標を達成するために活用できる資源を発掘するステップです。試してみたいことやモデルとなる人物についてなど、視点を変えた質問を繰り返すことで行動材料を集めることができます。

リソースの発掘にあたり大切なことは、相手に気づかせることです。コーチからは選択肢の提示や方法を尋ねる質問程度にとどめて、相手が自らの意思で気づき行動に移せるようにサポートしていきましょう。

アクションプランづくり

リソースの発掘ができたら、アクションプランづくりを行います。「いつまでに」「どのように行動するか」といった行動計画を具体的にたてていきます。アクションプランを綿密に作るほど、迷いなく行動に移すことができるでしょう。目標達成に向けて成果を上げるためには、きめられた期日に行動した結果を報告させるのがポイントです。

アクションプランは無理なく実行できるよう、相手の経験や特性、強みを考慮した計画づくりが大切です。

コーチングのコツ

コーチングをするうえで、会話の上手い下手はそれほど重要ではありません。むしろ話すことが苦手な人にこそ向いているといえるでしょう。コーチングの代表的なスキルに「傾聴」があります。相手の話に耳を傾けることが最も大切なのです。やみくもに質問をすればよいのではなく、相手のための質問を投げかけ本音の考えを引き出すことが重要です。

コーチングをうまくすすめるには、相手を尊重し同じ目線に立つことです。たとえ上司であっても、同じ目線で対話してくれる上司がいれば心を開きやすいでしょう。コーチングと聞くと身構えてしまうかもしれません。あまり難しく考えずに毎日の会話に少しずつ取り入れて、信頼関係を築くことから始めてみてはいかがでしょうか。

薬局経営でも人材育成は不可欠な要素

薬局経営において、人材育成は不可欠な要素です。最近は地域医療への貢献が重要視されており、薬局も在宅訪問やかかりつけの薬局として地域医療に対応していく必要があります。さまざまな症状を抱える患者さんに対応するためには、患者さんひとりひとりに合わせた対応ができる柔軟な考えが必要不可欠です。そんな薬局においては、状況に応じて適切に対応ができる薬剤師が必要とされています。

薬剤師が受け身のままでは、今後広がっていく地域医療への対応は難しくなるでしょう。主体的に考えて行動できる薬剤師を育成するためにも、薬局経営でコーチングを取り入れることをおすすめします。突然コーチングを行うと伝えると相手も身構えてしまうので、業務中の会話や休み時間での会話に、オープンクエスチョンから少しずつ取り入れてみましょう。

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