リフィル処方箋について
リフィル処方箋とは、簡単に言うと「一定期間内であれば繰り返し使える処方箋」のことです。2022年度診療報酬改定で導入されて以降、薬局が担う役割はさらに大きくなっています。ここでは、リフィル処方箋の概要や仕組み、メリット・デメリットに加えて、薬局での対応の流れや調剤時の注意点、2024年度診療報酬改定を踏まえた動向までをわかりやすく解説します。
リフィル処方箋とは
通常、薬剤の内容が同じであっても、同じ処方箋を複数回使うことはできませんでした。しかし、2022年度診療報酬改定によって、一定期間内であればひとつの処方箋を繰り返し使える「リフィル処方箋」が導入されました。症状が安定している患者さんを対象に、期間中は医師の診察を受けずに薬局で調剤を受けられる仕組みです。
リフィル処方箋導入の背景には、薬の処方のためだけに通院する回数が多い患者さんの負担を軽減し、なおかつ通院回数の減少によって医療費を抑制する狙いがあります。
「リフィル」とは「補充」を意味します。その意味の通り、リフィル処方箋は医師が投薬を決めて処方箋を発行する際に、繰り返し利用できる回数(最大3回まで)をあらかじめ決定します。たとえば90日分の薬剤を3回に分けたい場合は、30日分の処方箋を1枚発行し、利用可能回数を3回と記載します。
分割調剤との違い
リフィル処方箋と似た仕組みに、分割調剤があります。分割調剤は2016年から導入された方法で、定められた処方期間を最大で3分割するという仕組みです。これに対して、リフィル処方箋は同じ処方箋を規定回数繰り返して使うという点で異なります。
分割調剤は、主に長期保存が難しい薬剤を処方するとき、ジェネリック医薬品をはじめて使用し始めるとき、医師からの指示があったときなどに用いられ、分割回数は最大で3回と定められています。リフィル処方箋のように患者さんの判断で薬局を再訪して調剤を受けるものとは、運用の考え方が根本的に異なります。
リフィル処方箋の対象と対象外の医薬品
リフィル処方箋は、あくまでも症状が安定している患者さんを対象とした仕組みです。そのため、投薬量に制限のある医薬品は対象外とされています。具体的には、新薬(新医薬品のうち投与期間に上限が設けられているもの)、医療用麻薬、抗がん剤、一部の向精神薬などのほか、湿布薬などもリフィル処方箋では処方できません。
薬局としては、処方箋を受け付けた段階でこれらの対象外医薬品が含まれていないかを確認することが、対応の第一歩となります。
リフィル処方箋のメリット・デメリット
リフィル処方箋のメリット
医師の負担軽減
リフィル処方箋のメリットであると同時に、目的のひとつとも言えるのが医師の負担軽減です。処方箋を用意するために要する時間は医師の業務時間の多くを占めており、ほかの業務に取りかかれなかったり、残業時間が増えたりする原因となっていました。ひとつの処方箋を繰り返して使えるリフィル処方箋を導入することで、処方箋を用意するための事務作業時間を削減できることが大きなメリットです。
患者の通院負担軽減
患者側の負担軽減も、リフィル処方箋導入の大きな目的でありメリットです。従来は、処方箋を受け取るためだけに通院しなくてはいけない患者さんが数多くいました。その中には、遠方在住や歩行困難などの理由で頻繁な通院が大きな負担となっている患者さんもいます。リフィル処方箋が普及すれば、通院回数を減らせる患者さんは多くなるでしょう。
医療費の適正化
リフィル処方箋の普及は、国の医療費適正化にも寄与すると期待されています。処方のためだけの再診が減ることで、限られた医療資源を必要な患者さんに振り向けやすくなります。国としても、後発医薬品の使用促進や患者本位の医薬分業の実現と合わせて、こうした取り組みを推進しています。
リフィル処方箋のデメリット
医療事故のリスク
従来は、処方や調剤の場面で医師と薬剤師によるダブルチェックが働いていました。リフィル処方箋では、2回目以降の調剤時に医師の診察が入らないため、患者さんの状態変化の見逃しなどのリスクが指摘されています。だからこそ、薬局薬剤師による丁寧な状態確認と、必要に応じた受診勧奨がこれまで以上に重要になります。
患者さんの病状が把握しにくい
通院回数が減ることは患者さんの負担を減らせる一方で、医師が診察する機会や病状を聞き取る機会が減ることでもあります。患者さんの病状を確認する機会が減少するというリスクがあるため、薬局側でのフォローアップが欠かせません。
薬局・薬剤師の役割の拡大
リフィル処方箋の普及により、薬剤師には医師に代わって患者さんの経過を確認し、変化があれば処方医へつなぐという役割が求められるようになります。事務的な業務だけでなく、対人業務やコミュニケーションのスキルも一層必要となり、業務範囲の拡大につながります。
リフィル処方箋における薬局での対応の流れ
リフィル処方箋への対応は、通常の処方箋とは調剤日の考え方が異なります。薬局での対応の流れを整理しておきましょう。
1回目の調剤
処方箋の「リフィル可」欄に「レ」などのチェックが記載されている場合、その処方箋をリフィル処方箋として取り扱います。1回目の調剤は、処方箋の使用期間(原則として交付日を含めて4日以内)に記載されている日までに行います。あわせて、リフィルの総使用回数と次回調剤予定日を患者さんに案内します。
2回目以降の調剤
2回目以降の調剤については、原則として前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日として、その前後7日以内に調剤を行います。予定日から大きく外れる場合は、患者さんの服薬状況を確認したうえで対応を判断します。
調剤後のフォローと処方医への情報提供
リフィル処方箋では、毎回同じ薬局を利用してもらうことで、継続的な服薬管理とフォローアップが可能になります。薬剤師は調剤のたびに患者さんの体調や服薬状況、副作用の有無などを確認し、必要に応じて処方医へ情報提供(トレーシングレポート等)を行います。症状の悪化や飲み残しの多さなど、受診が必要と判断される場合には、速やかに受診勧奨を行うことが薬局の重要な役割です。
薬局がリフィル処方箋に対応する際の注意点
リフィル処方箋を安全に運用するために、薬局側では次のような点に注意が必要です。
- リフィル処方箋を紛失した場合、薬局では再発行できません。患者さんには自費での再発行、または再受診が必要になる旨をあらかじめ説明しておきます。
- 薬の受取可能期間を過ぎるとリフィル処方箋は無効になります。次回調剤予定日と受取期限を患者さんと共有し、失念を防ぎます。
- 2回目以降の調剤時に患者さんの状態変化を確認し、リフィルを継続してよいかを毎回判断します。
- 調剤の記録(調剤日・残り回数)を確実に残し、次回以降の調剤に引き継げるようにします。
こうした確認・記録の負担を軽減するうえでは、調剤監査システムなどのシステムによるチェック体制を整えておくことが、安全で効率的なリフィル対応につながります。
電子処方箋とリフィル処方箋への対応
2023年12月からは、電子処方箋でもリフィル処方に対応できるようになりました。電子処方箋でリフィル処方に対応している医療機関・薬局は、厚生労働省のホームページから確認することができます。
電子処方箋を利用するには、患者さん側でマイナンバーカードの健康保険証利用登録(マイナ保険証)が必要です。薬局としても、電子処方箋管理サービスに対応した環境を整えることで、リフィル調剤の回数管理や重複投薬・併用禁忌のチェックを効率化でき、安全性の向上が期待できます。今後の普及を見据え、電子処方箋への対応は薬局にとって重要な準備事項といえるでしょう。
2024年度診療報酬改定とリフィル処方箋
2024年度診療報酬改定では、リフィル処方箋の活用を後押しする見直しが行われました。主なポイントは次のとおりです。
- 生活習慣病管理料の施設基準に、28日以上の長期投薬やリフィル処方箋の交付が可能である旨を院内に掲示することが盛り込まれました。
- 特定疾患処方管理加算について、リフィル処方箋を発行した場合も算定できるよう見直されました。
- 地域包括診療料の施設基準にも、同様の掲示要件が盛り込まれました。
- 薬局側では、服薬情報等提供料の情報提供先に「リフィル処方箋の処方医」が明確に位置づけられ、薬局から処方医への情報提供が評価されやすくなりました。
これらの見直しは、医療機関・薬局の双方でリフィル処方箋を活用しやすい環境を整える狙いがあります。
リフィル処方箋の普及状況
制度の後押しが進む一方で、リフィル処方箋の利活用は依然として低い水準にとどまっています。中央社会保険医療協議会(中医協)の2024年度改定結果検証調査によると、医療機関におけるリフィル処方箋の発行割合は、2022年7月が0.04%、2023年7月が0.05%、2024年7月でも0.07%と、緩やかな増加にとどまっています。
その理由として、医師側では「長期処方で対応が可能だから」「患者からの求めがないから」が多く挙げられています。一方で患者側の利用意向は高く、病状が安定している場合に「利用したい」と答えた割合は6割を超えています。ただし制度の内容まで理解している患者さんは少なく、認知度の低さが普及の課題となっています。
つまり、患者さんのニーズはあるものの、制度が十分に知られていないというギャップが存在します。ここに、患者さんと日常的に接する薬局・薬剤師が果たせる役割があります。
※参照元:厚生労働省「長期処方及びリフィル処方箋の実施状況調査報告書」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001473987.pdf)
リフィル処方箋の薬局経営への影響
海外諸国と比較して、日本ではまだリフィル処方箋は十分に普及していません。しかし、将来的に普及が進むことで、薬局の役割はさらに大きく変化していくと考えられます。
まず、薬剤師には医師に代わって患者さんと直接向き合い、経過を確認する対人業務のスキルがこれまで以上に求められます。限られた労働時間の中でこうした新しい業務をこなすには、調剤や監査を効率化し、業務全体を最適化していくことが欠かせません。
また、リフィル処方箋への的確な対応や患者さんへの丁寧な説明は、「かかりつけ薬局」として選ばれるための強みにもなります。制度を正しく理解し、安全な調剤体制と継続的なフォローアップを整えることが、これからの薬局経営において重要なポイントになるでしょう。