分割調剤について
「分割調剤」とは、その名の通り処方箋を分割して発行する処方を指します。こちらの記事では、分割調剤の流れや注意点、どのような場合に行われる処方なのかといった点などについてまとめていますので、参考にしてください。
分割調剤とは
分割調剤とは、最大3回に分割して処方箋を発行する処方のことで、医師によって「薬剤師のサポートが必要である」と判断された場合に行われています。
この分割調剤は2016年の診療報酬改定以降に実施されるようになりました。しかし、それ以前も、患者さん自身による長期間に渡る薬剤の管理が難しいと判断される場合や、初めてジェネリック医薬品を使用する患者さんのためのお試し期間として短期間のみ処方する場合などに、すでに分割処方は用いられていました。2016年までは、長期処方やジェネリック医薬品のお試しでの分割処方には、医師への連絡は必要でしたが医師の判断までは必要ありませんでした。しかし、2016年の診療報酬改定以降の分割調剤には医師の判断も必要となっています。
分割調剤が行われる主なケース
分割調剤は、次のようなケースで行われることがあります。
- 医師が分割調剤を指示した場合
- 薬の長期保存が難しい場合
- 患者さん自身で長期間の服薬管理が難しい場合
- ジェネリック医薬品を短期間試したい場合
- 残薬や副作用の確認をこまめに行う必要がある場合
医師が分割調剤を指示する場合
医師が、患者さんの服薬状況や副作用、残薬の有無などを薬剤師に継続的に確認してもらう必要があると判断した場合、分割調剤が指示されることがあります。
この場合、薬局では処方箋の内容に沿って、1回目、2回目、3回目と分けて薬を調剤します。2回目以降も服薬状況を確認し、必要に応じて医師へ情報提供を行います。
薬の保存や管理が難しい場合
薬の種類によっては、温度や湿度の管理が必要なものがあります。患者さんの自宅で長期間保存することが難しい場合、薬局で管理しながら必要な分だけ受け取るほうが適していることがあります。
また、薬の種類が多い方や、飲み忘れ・飲み間違いが心配な方にとっても、分割調剤は服薬管理をしやすくする方法のひとつです。
分割調剤の流れ
分割調剤の流れは、医師の指示による場合と、薬局で必要性を判断する場合で異なります。ここでは、医師の指示による分割調剤を中心に説明します。
1. 処方箋が発行される
医師が分割調剤を必要と判断した場合、分割指示が記載された処方箋が発行されます。処方箋には、分割回数や各回で調剤する日数などが記載されます。
2. 薬局に処方箋一式を提出する
薬局では、処方箋と分割指示に関する書類を確認します。別紙を含む処方箋一式がそろっていないと受付できない場合があるため、手元の書類はすべて薬局に持参しましょう。
3. 薬を分けて受け取る
1回目は、指示された日数分の薬を受け取ります。2回目以降も、決められた時期に薬局へ行き、薬剤師から服薬状況や体調変化の確認を受けたうえで薬を受け取ります。
4. 必要に応じて医師へ情報提供される
副作用が疑われる場合、残薬が多い場合、飲み忘れが続いている場合などは、薬剤師から処方医へ情報提供が行われることがあります。これにより、薬の変更や服薬方法の見直しにつながる場合があります。
分割調剤とリフィル処方の違い
分割調剤と混同されやすい制度に「リフィル処方」があります。どちらも複数回にわたって薬を受け取る仕組みですが、内容は異なります。
| 項目 | 分割調剤 | リフィル処方 |
|---|---|---|
| 仕組み | 処方された薬を複数回に分けて受け取る | 同じ処方箋を決められた回数まで繰り返し使う |
| 主な目的 | 服薬状況、副作用、残薬、薬の保管状況などを確認する | 症状が安定している患者さんが、毎回受診せずに薬を受け取れるようにする |
| 回数 | 医師の指示による場合は最大3回 | 総使用回数の上限は3回 |
| 向いているケース | 服薬管理や副作用確認が必要な場合 | 症状が安定し、同じ薬を継続している場合 |
簡単にいうと、分割調剤は「処方された薬を分けて受け取る仕組み」、リフィル処方は「同じ処方箋を繰り返し使う仕組み」です。どちらが使えるかは、患者さんの状態や薬の内容、医師の判断によって異なります。
分割調剤のメリット
服薬アドヒアランスの向上
患者が自身の病状について理解・納得した上で、積極的に薬を服用する状態を「服薬アドヒアランス」と呼びます。一般的に、服薬量が増加した場合には患者の服薬アドヒアランスが低下してしまうことで飲み忘れなどが発生し、本来期待される効果が得られなくなる、と考えられています。
分割調剤を用いることによって、複数回にわたる調剤や交付の際に薬剤師から服薬指導やカウンセリングを受けることが可能になります。その際、患者は困り事や薬の使用感、自身の健康状態の変化などについて相談することができるといったように、患者側からのアクションが可能となり、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。
副作用や効果を早く確認できる
分割調剤を行う場合には、調剤を行うたびに患者の健康状態などさまざまな点についてヒアリングし、処方医に連絡が可能となります。例えば、新薬の服用時など副作用について予測が難しいケースだったとしても、分割調剤を選択することによって副作用や効果について早い段階で確認できます。
このように、コミュニケーションを多くとれる点から患者との信頼関係の構築にもつなげられるため、結果として前述した服薬アドヒアランスの向上も期待できます。
ジェネリック医薬品を試しやすくなる
ジェネリック医薬品について不安を感じている患者の場合でも、分割調剤の選択によって試しやすくなるという面もあります。少量から試せるため、効果や副作用を確認しながら服用でき、ジェネリック医薬品への移行を行えます。
また、万が一ジェネリック医薬品が合わなかった場合にもすぐに元の薬に戻せますので、リスクを抑えられますし、医療費の削減にも貢献できるため、患者の経済的なメリットにも繋げられます。
患者さんの負担軽減
通常の調剤を選択したケースでは、例えば長期保存ができない薬の処方を行った場合、都度通院・受診する必要がありました。このような場合でも分割調剤であれば受診する時間や医療費負担の軽減につながります。
さらに高温多湿を避ける必要がある薬剤など、患者の自宅では保管が難しい薬があったとしても、薬局での管理が可能になるため、患者の負担を軽減できますし、患者以外の家族が薬を管理している場合には、家族の負担軽減に繋げられます。
分割調剤の注意点
分割調剤にはメリットがある一方で、注意点もあります。
- 薬局へ複数回行く必要がある
- 2回目以降の受け取り時期を忘れないようにする必要がある
- 必要な処方箋や別紙を忘れると受付できない場合がある
- できるだけ同じ薬局で継続して受け取ることが望ましい
- 自己判断で服用を中止しない
特に、薬が切れる前に次回分を受け取ることが大切です。薬局で薬を受け取る際は、次回の来局予定日と持参する書類を必ず確認しておきましょう。
薬局側では確認体制の整備も重要
分割調剤では、薬局側の確認作業も増えます。薬剤師は、何回目の調剤なのか、前回までに何日分を交付したのか、残薬はあるのか、副作用や体調変化はないかなどを毎回確認する必要があります。
確認項目が増えると、入力ミスや数量の誤り、薬剤の取り違えなどのリスクも高まりやすくなります。そのため、分割調剤を安全に行うには、薬剤師個人の注意力だけに頼るのではなく、薬局全体でミスを防ぐ仕組みを整えることが大切です。
その対策のひとつとして、調剤監査システムの導入があります。調剤監査システムを活用すると、処方内容と調剤内容の照合、薬剤の取り違え防止、数量確認などを支援できるため、確認工程が多い分割調剤でも安全性を高めやすくなります。
もちろん、システムを導入すればすべてのミスを防げるわけではありません。しかし、薬剤師による確認とシステムによるチェックを組み合わせることで、ヒューマンエラーの低減や業務効率化につながり、患者さんが安心して薬を受け取れる環境づくりに役立ちます。
まとめ
分割調剤とは、処方された薬を複数回に分けて薬局で受け取る仕組みです。長期間の薬の管理が難しい場合や、副作用・残薬をこまめに確認したい場合、ジェネリック医薬品を試したい場合などに行われます。
患者さんにとっては、薬剤師へ定期的に相談できることが大きなメリットです。一方で、薬局へ複数回行く必要があり、処方箋や別紙を忘れないよう注意が必要です。
また、薬局側では確認項目が増えるため、調剤監査システムなどを活用し、調剤ミスを防ぐ体制を整えることも重要です。分割調剤を安心して利用するためにも、疑問がある場合は医師や薬剤師に相談しましょう。