薬局経営のオンライン化
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様々な分野においてオンライン化が進んでいる昨今。薬局経営においてもオンライン化の波が来ています。そうした流れについての解説や、オンライン化に対応するポイントなどについての情報を取りまとめて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
オンライン化の波は薬局にも
大手ドラッグストアの、オンライン化成功事例
まずは、オンライン化を行い、業績アップを実現した大手ドラッグストアの成功事例を紹介していきたいと思います。その大手とはズバリ、「ウエルシアホールディングス」のこと。市販薬や化粧品などの販売はもとより、医師の処方箋にも対応している調剤薬局としての顔も持っています。
そんなウエルシアでは、昨今のコロナ禍においても前年比110%という売り上げを達成。その原動力となったのが、「オンライン処方箋予約」を充実させるという戦略。
オンライン処方箋予約とは、薬の処方箋を紙ではなくオンラインのデータとして扱い、処方箋のやり取りが行えるシステムのこと。これにより医薬品・調剤薬の処方を大きく効率化することで、ウエルシアの売上における医薬品・調剤の割合が約39%まで上昇したとのこと。ドラッグストアとしてだけではなく、調剤薬局としても大きな役割を果たし、利益を増大させることに成功したそうです。
オンラインストアとの相乗効果も絶大
加えてウエルシアでは、「オンラインストア」の利便性向上にも大きく注力。コロナ禍によってステイホームの風潮が高まり外出頻度が激減したことにより、ドラッグストア業界では市販薬や医薬部外品、化粧品などの売り上げ減少に直面しました。
そうしたなか、ウエルシアは自宅にいながら商品の購入ができるオンラインストアの利便性を向上させることで、店頭販売機会の減少をリカバー。前述の「オンライン処方箋予約」との相乗効果も生み出し、コロナ禍においても業績アップを実現できたそうです。 なかなかに興味深い事例ですね。
※参照元:コロナ禍でも業績アップ!?話題のドラッグストアから学ぶオンライン化戦略
(https://digital.reserva.be/drug-store-online/)
地域密着型の調剤薬局にも、オンライン化は不可欠
上記のウエルシアの成功をうけ、調剤薬局併設型のドラッグストアではオンライン化の追随が加速しているとのこと。一方で、昔ながらの地域密着型の調剤薬局では、オンライン化がまだまだ遅れているというのが現状。しかしコロナ禍によって、そうした薬局こそオンライン化の必然性が高いということに注目が集まっています。
そもそも地域密着型の調剤薬局の多くは、医療機関の近隣に立地し、処方箋調剤を請け負うことで利益を得るというスタイルが長らく続いていました。その一方で、コロナ禍以前より、少子高齢化により人口減少や社会保障費の増加によって、調剤薬局同士のパイの奪い合い競争が増えていくという予測もなされていました。それにも拘わらず、多くの薬局はそうした事態への対策はほとんど行われないままでした。
そうした状況のなか、まさに突如として見舞われたのがコロナ禍。マスク着用や手洗い消毒の徹底がなされたおかげでインフルエンザや風邪の患者が減り、医者にかかって処方薬を服用するケースも激減、結果、薬局の経営が逼迫するという、なんとも皮肉な事態となりました。
調剤薬局が生き残るための戦略とは?
以上のことから、今後はこれまでの処方箋調剤に依存したやり方では経営が成り立たず、調剤薬局の淘汰が進むと考えられています。そうした状況で生き残りを図るための方策のひとつが、他ならぬオンライン化であるという提言がなされています。
オンライン化を行えば、これまでの近隣医療機関の処方箋だけに依存しなくても、例えば地域住民で職場近くの医療機関を受診した方などのニーズを新たに開拓することができます。またオンライン診療を開始した医療機関との連携もスムーズに行えるようになり、もちろん従来からの強みである処方薬を扱えるという点も活かせるとのこと。
そうすることによって、調剤薬局は単に薬を提供する、薬の説明をする“だけ”の場所から、「患者に寄り添うことができる、頼りになる存在」へと進化することができ、ひいては地域の医療や公衆衛生のライフラインとしての役割を、一層際立たせることができるとしています。なかなかに興味深い分析ではないでしょうか。
薬局がオンライン化に対応するには
業務面での、オンライン化によるメリットを確認
繰り返しになりますが、調剤薬局のオンライン化は、今後の生き残りのための必須条件であり、また薬剤師が調剤ミスを起こしてしまうヒューマンエラー防止の観点からも重要になってきます。例えばオンライン化によって情報履歴システムと調剤監視システムを連携させれば、個々の患者さんがこれまでどんな病気を患い、どんな薬剤を処方されてきたかを素早く正確に把握することができ、調剤監視システムによる調剤ミス防止効果と併せて、ダブルチェック機能が発揮されます。
一方、オンライン化が遅れれば遅れるほど、情報の格差が生まれてしまい、医療機関や介護施設などとの連携も取りづらくなってしまいます。今後、導入が進んでいくと予測される、マイナンバーカードを保険証として利用できるようになるシステム構築にも時間がかかるという、悪循環に陥ってしまうことも予測できます。可能な限り速やかに、オンライン化への移行を推し進めることが大切です。
具体的に、何をどうすればいいのか?
とは言え、これまで薬局経営に携わってきた方の多くは、ITに関して詳しくないという方も多いことでしょう。まさに「何をどうしていいのか、見当もつかない」という状態かと思われます。そこから抜け出すには、じっくり腰を据えて、薬局のオンライン化に関する知識を深めていくことが大切です。
前述しました通り、オンライン化によるメリットとしては、医療機関との緊密な連携や情報共有や調剤ミス防止のダブルチェックなど、実に様々な効果を生み出すことができます。まずはそうした知識を深めていき、ある程度の判断ができるようになったら、ご自身の経営する薬局に必要なもの、欲しいものは何かを洗い出します。
その上で、そうしたシステム導入を手掛ける専門家にアドバイスを仰ぎ、お勧めのシステムやアプリケーションの選択や、コスト面での相談などを行いながら、オンライン化を進めていくというやり方が賢明ではないでしょうか。今すぐ、出来ることから始めてみてください。