ヒヤリハット事例
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ヒヤリハットは重要なものですが、具体的にどのようなヒヤリハットが報告されているのか、事例を元に見てみるとしましょう。
2024年の調剤薬局ヒヤリハット報告事例
第31回報告書からヒヤリ・ハットの事例を抜粋し、対策をご紹介します。診療ガイドラインを活用して疑義紹介や処方医への情報提供を行ったことなどの事例を紹介します。事例には有益な情報が示唆されていますのでぜひご覧ください。
※参照元:日本医療機能評価機構|日本医療機能評価機構|薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業第 31回報告書(2024年1月~6月)
(https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/report_31.pdf)
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スペック比較
事例1:マンジャロ皮下注アテオスに関する事例
マンジャロ皮下注2.5mgアテオスが処方された事例です。患者は同薬剤を4週間使用していて今回が5週目の処方でしたが、マンジャロ皮下注アテオスは通常週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量する薬剤です。そのため、疑義照会を行った結果、マンジャロ皮下注5mgアテオスへ変更することになりました。
また、マンジャロ皮下注2.5mgアテオスを4週間使用した患者に、マンジャロ皮下注10mgアテオスが処方されたこともありました。マンジャロ皮下注アテオスの添付文書の用法及び用量には、「週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後に週1回5mgに増量する。」と記載されていることから処方医へ疑義照会を行った結果、マンジャロ皮下注5mgアテオスに変更となりました。
※参照元:公益財団法人日本医療機能評価機構|薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業第 31回報告書(2024年1月~6月)
(https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/report_31.pdf)
事例2:グラアルファ配合点眼液に関する事例
アイファガン点眼液0.1%を使用中の患者にグラアルファ配合点眼液が追加で処方されることになりましたが、グラアルファ配合点眼液には、アイファガン点眼液0.1%の有効成分であるブリモニジン酒石酸塩が含まれるため、処方医へ疑義照会を行いました。
結果、アイファガン点眼液0.1%は削除されることになりました。また、緑内障の患者にグラアルファ配合点眼液が処方されたこともありました。患者は以前からアイラミド配合懸濁性点眼液を使用していて、今回も定期薬として処方されていました。
グラアルファ配合点眼液とアイラミド配合懸濁性点眼液は有効成分のブリモニジン酒石酸塩が重複するため、処方医に疑義照会を行った結果、アイラミド配合懸濁性点眼液がエイゾプト懸濁性点眼液1%に変更となりました。
※参照元:公益財団法人日本医療機能評価機構|薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業第 31回報告書(2024年1月~6月)
(https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/report_31.pdf)
ヒヤリハットを防ぐポイント
症状・薬への理解もさることながら、患者に対して常にフラットな意識を持つことが求められます。
特に薬を継続している患者に対しては「以前もそうだった」「前と同じ」であることに疑問を持ちにくくなります。しかし、どのような状況の患者に対しても、あくまでも「処方される薬」のみをフラットに見て、適切な判断を下すことが求められます。
少しでも疑問に感じることがあれば疑義紹介を積極的に行い、疑問を解消する姿勢が求められます。「いつもと同じだから」と疑問に思ってもそのまま処方してしまうと、患者の生命を脅かすことになりかねない責任を背負っていると自覚することと併せて心がける必要があります。
2023年の調剤薬局ヒヤリハット報告事例
疑義照会や処方医への情報提供に関する事例
第30回報告書から事例を抜粋し、対策をご紹介します。疑義紹介や処方医への情報提供を行うことによって処方薬の変更などが行われた事例についてまとめました。
※参照元:日本医療機能評価機構|事例から学ぶ
(https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/learning_case_2023_2_01.pdf
事例1:病態禁忌の事例
新型コロナウイルス感染症の20歳代の女性患者に対し、ゾコーバ錠125mgが処方された事例です。この時、患者に妊娠または妊娠している可能性を確認したところ、月経が予定日よりも遅れており、妊娠の可能性があることがわかりました。処方医に疑義照会を行った結果、薬剤が削除となりました。
こちらのケースについては、医療機関でも妊娠について尋ねられたものの、妊娠の可能性まで考慮した上での返答はしていなかったことが原因として推定されています。
事例2:使用禁忌に関する事例
患者に対し、ゾコーバ錠125mgが処方された事例です。こちらの患者は、ゾコーバ錠と使用禁忌とされているラツーダ錠40mgを服用していたため、薬剤師は処方医に対して疑義照会を行っています。処方医によると、患者から併用薬はないと診察時に聞いたとのこと。こちらの疑義照会を行った結果、ゾコーバ錠125mgがラゲブリオカプセル200mに変更となりました。
事例3:同効薬が重複していた事例
施設に入所している患者に対し、ラゲブリオカプセル200mgが処方された事例です。薬剤師は、施設の職員から「他の医療機関において、患者に対しパキロビッドパックが処方されている」という点を確認したため、薬剤師はラゲブリオカプセル200mgを処方した医師に対して疑義照会を行ったところ、削除となりました。
事例4:腎機能障害がない患者への処方
患者にパキロビッドパック300が処方された事例です。薬剤師は、患者から腎機能障害がない点を聴取。パキロビッドパック300は中程度の腎機能障害が見られる患者に投与することから、処方医に対して疑義照会を実施。その結果、パキロビッドパック600に変更となっています。
事例5:患者の服薬状況に関する事例
90歳代患者に対し、ラゲブリオカプセル200mが処方された事例です。こちらの患者は、これまで嚥下困難はなかったものの、交付の翌日に「カプセルが大きくて飲み込めない」といった内容の相談がありました。そのため、薬剤師は製薬会社から提供されているデータを確認し、脱カプセル後に懸濁して服用させたとしても薬剤の吸収には問題ないと判断し、処方医に情報提供を行いました。協議の結果、カプセルを外して水に懸濁した直後に服用することになりました。
そこで薬剤師は患者に対し、懸濁後2時間以降のデータがないこと、懸濁せずに粉末を服用したデータはないこと、妊婦への曝露に注意する必要があるという点について説明しました。
事例6:患者の年齢に関する事例
18歳未満の患者に対し、ラゲブリオカプセル200mgが処方された事例です。ラゲブリオカプセル200mgは18歳以上が対象となっていることから、薬剤師は処方医に対して疑義照会を実施。その結果、ラゲブリオカプセル200mgからゾコーバ125mgに変更となりました。
ヒヤリハットを防ぐポイント
例えば、ゾコーバ125mgについて女性への処方を行う場合には妊娠または妊娠をしている可能性まで十分に確認を行うことや、使用禁忌がないかなどについて確認することが重要となってきます。また、処方薬によっては年齢によって処方できないものもあることから、患者の年齢に合った処方が行われているかも重要なポイントです。
さらに現在服用している薬と重複しないようにするためには、服用中の薬がないかどうかという点も十分な確認が必要であるといえます。
自動車の運転等危険を伴う機械を操作する患者に注意が必要な薬剤に関する事例
薬剤の中には、自動車などの運転を行う患者に対して処方を行う場合、注意しなければならないものもあります。そこで、第29回報告書から事例を抜粋し、対策をご紹介します。
※参照元:日本医療機能評価機構|事例から学ぶ
(https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/learning_case_2023_1_01.pdf)
事例1:花粉症患者に対する処方の事例
花粉症の患者に対して、オロパタジン塩酸塩錠5mg「JG」が処方された事例です。この患者の職業は電車の運転士であり、さらに服用する期間中も運転業務を継続する、という点を聴取しました。
しかしオロパタジン塩酸塩錠の添付文書には「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。」という記載があります。このような点から疑義照会を行ったところ、フェキソフェナジン塩酸塩OD錠60mg「YD」に変更になりました。
ヒヤリハットを防ぐポイント
上記のように、眠気が発現しやすい薬剤の処方が行われたケースにおいては、患者に自動車などの運転を行う可能性があるかを確認することが非常に重要なポイントです。しかし、自動車等の運転を禁止することによって日常生活や社会生活を送る上で支障が出る可能性もあるため、必要に応じて眠気が発現する可能性が少ない薬剤への変更を行うなど、自動車運転等の頻度・状況、患者の病状や生活の質などさまざまな面を考慮しながら対応することが重要といえます。2020年の調剤薬局ヒヤリハット報告事例
日本医療機能評価機構では定期的にヒヤリハットの事例が挙げられています。確認するだけで身になることも多いのではないでしょうか。そんなヒヤリハット事例ですが、第23回・2020年のものでは抗てんかん薬について話題となっています。
抗てんかん薬に関するヒヤリハット事例
第23回報告書から事例をいくつか抜粋し、対策をご紹介します。
※引用元:日本医療機能評価機構|事例から学ぶ
(http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/learning_case_2020_1_01.pdf)
事例1:上限量の理解不足
ラミクタール錠とセレニカR錠を併用して服用してい患者に対し、投与量が変更された。しかし一日上限値を超えていたことから、再度変更。一日の上限量を理解していなかったことによる、ヒヤリハットです。
事例2:増量の間隔を誤る
イーケプラ錠500mg1日3,000mgが処方されたものの、実はその8日前にイーケプラ錠500mgを1日2,000mgに増量していたばかり。3,000gを超えない範囲という運用は守っているものの、増量は2週間以上空けなければならない点を失念していたとのことで、後に再度2,000mgへと変更となりました。
ヒヤリハットを防ぐポイント
抗てんかん薬はいくつか守らなければならない点があります。一つだけをクリアしていればOKなのではなく、全てを守らなければならないので覚えておかなければならない点が多々あります。いわば複合的な知識が求められるので、監査をより徹底して行う必要があります。
調剤監査システムを使用してのヒヤリハット事例
第23回報告書から事例をいくつか抜粋し、対策をご紹介します。
※引用元:日本医療機能評価機構|事例から学ぶ
(http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/learning_case_2020_1_02.pdf)
事例1:レセプトコンピュータへの処方入力間違い
患者にテルチア配合錠BP「DSEP」を渡すところ、テラムロ配合錠BP「DSEP」を渡してしまったとのこと。ピッキングでも誤っていたことからシステムでエラーが表示されず、監査でも気付かなかったとのことです。
事例2:調製時の他剤の混在
メバロチン錠5の棚にメバロチン錠10が混在していたことで、メバロチン錠5を取りそろえた際、メバロチン錠10を一緒に調製してしまったとのこと。調剤監査支援システムではメバロチン錠5の包装バーコードを読み取ったことからエラーも表示されず、患者と確認した際にミスに気付いたとのことです。
ヒヤリハットを防ぐポイント
調剤システムは利便性の高いもので、上手く活用することで薬剤師の労働環境を大きく変える可能性があります。しかし、レセコンの入力、あるいは薬剤補充に誤りがあるようではせっかくの利便性の高さも活用できません。入力、薬剤補充など、人間の手が加わる部分での間違いをないよう徹底することが重要です。
人間の手によってミスを起こさないことこそ、調剤システムの利便性をより高めるものです。確認すべき部分は何度もチェックしておきましょう。