薬剤師の調剤ミスが多い… そんな薬局がいますべきこと
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薬剤師は国家資格。高い知見を持つ一方で、アナログな作業ではどうしてもミスもしてしまうものです。特に昨今、様々な労働環境に於いて人手不足が叫ばれている影響もあり、薬剤師のミスが顕著です。そこで、薬剤師のミスの種類や事情・特徴についてを見てみるとしましょう。
調剤ミスの分類
調剤ミスと呼ばれるものにはいくつかの種類があります。
日本薬剤師会の定義をご紹介しましょう。
- 調剤事故
医療事故の一類型。調剤に関するすべての事故関連して、患者に健康被害が発生したもの。薬剤師の過失の有無を問わない。 - 調剤過誤
調剤事故の中で、薬剤師の過失により起こったもの。調剤の間違いだけでなく、薬剤師の説明不足や指導内容の間違い等により健康被害が発生した場合も、「薬剤師に過失がある」と考えられ、「調剤過誤」となる。 - ヒヤリハット事例(インシデント事例)
患者に健康被害が発生することはなかったが、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした出来事。患者への薬剤交付前か交付後か、患者が服用に至る前か後かは問わない。
※引用元:公益社団法人 日本薬剤師会 公式サイト「薬剤師会における用語定義について」
(https://www.nichiyaku.or.jp/pharmacy-info/accident/link01.html)
調剤過誤の防止・対策
どれだけ気を付けていても調剤過誤のミスは出てしまうものですが、調剤過誤を少なくするための環境づくりは大切です。また、もしもですが調剤過誤が起きてしまった場合にはどうするのか。すぐできる調剤過誤対策、抜本的な調剤過誤対策、調剤過誤が発生してしまった場合の対応についてご紹介します。
調剤過誤の事例
2020年、2019年に、実際に起きてしまった調剤過誤の事例をご紹介します。なぜ調剤過誤が起きてしまったのか、その詳細と考えられる対策についてまとめています。
調剤過誤の慰謝料は?
もしも調剤過誤を起こしてしまった場合、慰謝料や損害賠償の話へと発展するケースがあります。そのような場合どうなるのか、過去の事例をもとに具体的な慰謝料をまとめています。
ヒヤリハット防止・対策
ハインリッヒの法則によると、1件の重大事故の背景には300ほど存在するというヒヤリハット。2020年9月、日本医療機能評価機構から発表された「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業2019年 年報」によると、19年の1月から12月の1年間で報告されたヒヤリハットは前年度の倍近くにのぼりました。(2019年は14万4,848件、2018年は7万9,973件)。重大な事故につながるヒヤリハットを防ぐための対策とは?
※引用元:日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業2019年 年報」
(http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/year_report_2019.pdf)
ヒヤリハット事例
ヒヤリハットはその事例を確認するだけでも、予防意識につながるはずです。実際にどのようなヒヤリハットが報告されているのでしょう。日本医療機能評価機構で定期的に公表されているヒヤリハット事例の中から、いくつかを紹介します。
調剤ミスで問われる責任・影響
社会的に責任
調剤ミスによって患者に処方すべき薬が処方できなかった場合、大きな責任に発展する可能性があります。患者からすれば、体調が良くなると思って摂取した薬に、実は異なる成分が含まれているのです。体調の悪化を招く可能性も決してゼロではありません、持病の禁忌薬を間違えて処方してしまった場合、大げさではなく生命・健康に大きな悪影響を及ぼす可能性もあります。
大問題となれば薬剤師だけの責任ではなく、薬剤師を雇っていた薬局やドラックストアも決して無関係ではありません。
ともすれば労働環境の悪さがクローズアップされ、薬局・ドラッグストアはもちろんのこと、業界全体のネガティブイメージの造成に繋がりかねないでしょう。
法的責任
法的責任は大きく刑事責任・行政責任・民事責任の3種類があります。
調剤ミスによって患者が何らかの不利益を被ってしまった場合、3種類すべてに於いて責任を負う可能性があります。
例えば患者の被害が重大な場合、業務上過失致死傷罪の可能性があります。患者の被害が大きなものであればあるほど、刑事責任を負うリスクが高まります。
また、被害の度合いによって行政から業務停止命令等を受けることもあります。これが行政責任です。
そして被害者、あるいは被害者の遺族から何らかの訴えを起こされることが民事責任です。いずれも調剤ミスが発端となり、責任を負う可能性があるだけに、如何に薬局やドラックストアの調剤がミスの許されない仕事なのかが分かるのではないでしょうか。
「仕方ない」では済まされない調剤ミス
人間は誰もがミスをするものです。心情的には「仕方ない」と思うものでしょう。しかし、患者相手のミスは「仕方ない」では許されないケースもあります。
場合によっては薬剤師だけの問題ではなく、薬局全体、さらには薬剤師全体にまで悪影響を与える事態にまで発展する可能性もゼロではありません。
だからこそ、ミスの可能性を最小限に食い止める環境の導入が重要。起こしてからではなく、起こす前にミスが出ない環境に留意してみてはいかがでしょうか。